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2020-09-16 (Wed) 22:40

佐々木隆次氏による『東日流外三郡誌』所見

『季刊邪馬台国52号』1993年秋号p273-274。

『東日流外三郡誌『東日流外三郡誌』の用字・語法など―その誤りを中心として―」
   佐々木隆次(県立青森北高校教諭 青森古文書解読研究会副会長)
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『東日流外三郡誌』は、一読して、昭和年代の、古文知識を充分身につけていない人が、歴史のいろんな面を、古文らしく、すべて同じ調子の文体で書いたものである。筆者が異なるはずの各文書が、同じ誤りをおかし、どれ一つとっても、異るところのない文章で書かれている。

 和田喜八郎氏に関わる『みちのくのあけぼの 市浦村史資料編 東日流外三郡誌 上巻』(青森県市浦村史編纂委員会 昭和五十四年四月一日発行)を用いて、用字と語法の誤りなどを指摘し、この書は偽作であることを述べることにする。
 この書は上中下三巻から成って、数えきれないほどの短編で構成されている。和田喜八郎氏の先祖の係累者という秋田孝季なる人物が災厄による原本(通常、古文書と称すべきもの)喪失を心配して写しとして書いたというのが、これらの文章のようである。その文章内容はほとんどが短編物語ふうで叙述スタイルも、そこに用いられていることばも古文書特有の簡潔な表現とは言えないもので、秋田孝季が生存していただろう寛政年間、つまり江戸時代中期末のものと言えない文章である。
 上中下三巻を通じて、ほんのわずか漢文で書かれている文があり、他に「源(原)漢文」と断り書きをしつつ漢字ひらがな交じりに書き直した古文調の文章もところどころにある。いずれにしても一読して昭和年代の、古文知識を充分に身にっけていない人が歴史のいろんな面を古文らしく、すべて同じ調子の文体で書いたもので、同じ種類の誤りをおかし、どれ一つをとっても異るところのない文章である。
 本書によれば、秋田孝季が副本として書写したものを、和田喜八郎氏の先祖とされる和田長三郎吉次(初代)から三代長三郎まで写し書きしたという。それであれば、本来、時代ごとに文体の特色があるものだが、これではそれぞれ筆者が異なるはずの各文書の文体を変えて、現代の一個人が自己流の文体で書いたと理解せざるを得ない。文体を変えると、おのずと部分的に内容も変わるものである。この方法で正しい歴史は伝わるはずがない。この時点で既に偽作である。ましてや秋田孝季や各代和田長三郎が書いたものでは決してない。
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どれ一つとっても、異るところのない文章」という指摘は正鵠を得ている。2006年になって古田氏が見出したとされる「寛政原本」にしても同様である。江戸期の秋田孝季や和田長三郎吉次の筆跡と、明治期の和田末吉、そして戦後の和田喜八郎氏の筆跡がことごとく酷似していることは明明白白である。

しかも、変体がなやくずし字が殆ど出てこない江戸期や明治期の古文書など、初めから眉唾であり、古文書の心得のある人々の目を誤魔化すことなどできようはずもない。

佐々木隆次氏の一稿とほぼ同じ時期に書かれたと思われる藤本光幸氏の所論を以下に引くが、藤本氏の言う「漢文体のもの」を「読み下し文に書き直し」た際、何故当時の仮名遣いが出現しないのか?「標準語がやっと定着したとき」などと見てきたようなことを言うのは笑止。

藤崎町文化財審議委員と言うなら、在地の古文書くらい目にしたことがあるのではないか。ならば、『東日流外三郡誌』の仮名遣いのおかしさに気づかないはずはないのではないかと思う。ついでに言えば、藤本氏の「偽書説」に対する反論は反論を形成していない。「和田喜八郎氏の原稿は一切使用していない」という一文が、それをよく物語っている。



【参考引用】
 『別冊歴史読本 特別増刊「古史古伝」論争』1993/8/12発行。p250
「『東日流外三郡誌』偽書説への反証」藤本光幸・藤崎町文化財審議委員。
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 原本は漢文体のものも多かったが、書写する際に長三郎末吉は、わかりやすくするために、ほとんどを読み下し文に書き直している(ただしそれに対しては原漢書と注をしている)。明治期は文体が不統一を極めた時代であるが、標準語がやっと定着したときにおいて、再書写したのであるから、文法的な誤りや誤字も仕方のないことではなかろうか。
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最終更新日 : 2020-09-16

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